わが青春つきるとも──伊藤千代子の生涯
石子 順(映画評論家)
日本映画はこれまでこのような女性を描いただろうか。 山本宣治の「武器なき斗(たたか)い」(1960年、山本薩夫監督)がある。 小林多喜二の「小林多喜二」(1974年、今井正監督)がある。 プロレタリア文学の「蟹工船」(1953年、山村聰監督)、「太陽のない街」(1954年、山本薩夫監督)の映画化はあった。 だが目覚めと抵抗と、たたかいぬいた乙女がいたことを本格的に描かれることはなかったのでは。 その死から100年近くたって無名の人、伊藤千代子が映画によみがえった。