映画論評

21世紀に訴えかける激烈青春
わが青春つきるとも──伊藤千代子の生涯
石子 順(映画評論家)
©「治安維持法と現代」43号

 日本映画はこれまでこのような女性を描いただろうか。 山本宣治の「武器なき斗(たたか)い」(1960年、山本薩夫監督)がある。 小林多喜二の「小林多喜二」(1974年、今井正監督)がある。 プロレタリア文学の「蟹工船」(1953年、山村聰監督)、「太陽のない街」(1954年、山本薩夫監督)の映画化はあった。 だが目覚めと抵抗と、たたかいぬいた乙女がいたことを本格的に描かれることはなかったのでは。 その死から100年近くたって無名の人、伊藤千代子が映画によみがえった。

  
  

 

人々を愛するが故に、権力の攻撃に凛として対決する姿が、美しく鮮やかに大型スクリーンに躍動
宮地 さか枝(映画製作を支援する会会員)
©「治安維持法と現代」43号

 映画「わが青春つきるとも──伊藤千代子の生涯」の、完成披露有料試写会が4月2日(土)、都内「銀座ブロッサムホール」で開催され、 私も多くのみなさんと鑑賞しました。

 新人俳優井上百合子が演ずる伊藤千代子が、治安維持法で逮捕され拷問されても、人々を愛するが故に、権力の攻撃に凛として、対決する姿が、 美しく鮮やかに大型スクリーンに躍動していました。千代子は、あくまでも良心に従い、特高警察の転向の誘いに負けませんでした。

  
  

 

──ジェンダー平等求めた女性の連帯──
千代子から学ぶ民主主義獲得のたたかい
対談 ワタナベ・コウ ツルシカズヒコ
©「治安維持法と現代」43号

ツルシ 桂壮三郎監督の映画「わが青春つきるとも──伊藤千代子の生涯──」がついに完成したね。 コウも昨年10月、『漫画 伊藤千代子の青春』(新日本出版社)を出版した。 いずれも『増補新版 時代の証言者 伊藤千代子』(藤田廣登著 学習の友社)を原作・原案にしている。 1905年生まれの伊藤千代子の生涯を、いま、創作という形で多くの人に知らせる意義は何だろうか。

コウ 大きく2つあると思うんだけど、1つ目は、治安維持法下での千代子のたたかいを学ぶこと。 千代子は、戦前日本のファシズム下で反戦平和と民主主義を求める活動をした。いまからすれば、あたりまえの主張なのに、 検挙され激しい拷問を受け刑務所に収監された。そういう時代があったことを若い人たちにも知ってほしい。

  
  

 


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